取組情報

むし歯が多い地域における子どものむし歯予防プロジェクトの推進

取組課題

切れ目ない妊産婦・乳幼児への保健対策 ▼

【妊娠期~乳幼児期】切れ目ない支援 ▼

・児の健康づくりについて

むし歯のない3歳児の割合

仕上げ磨きをする親の割合

・乳幼児健康診査事業の受診促進

乳幼児健康診査事業を評価する体制がある市区町村の割合
/市町村の乳幼児健康診査事業の評価体制構築への支援をしている県型保健所の割合

関係機関との妊娠期からの連携強化 ▼

子どものかかりつけ医(医師・歯科医師など)を持つ親の割合

学童期・思春期から成人期に向けた保健対策 ▼

思春期保健対策 ▼

歯肉に炎症がある十代の割合

取組の対象

乳児 幼児 学童 思春期

取組の背景

 姫路市の本土から約18キロ離れた離島である家島・坊勢地域では、3歳児健診におけるむし歯の有病率が市全体と比べ、2~3倍高い状態が15年以上続いていた。そこで平成26年度より、課内プロジェクトを立ち上げ、1歳6か月・3歳児健診結果の問診項目や歯科健診結果、学校保健統計、国民健康保険統計等のデータ分析を開始するとともに、幼稚園・小・中学校の養護教諭及び学校歯科医への聞き取りや、実際に現地に出向き、乳幼児の保護者に対して聞き取り調査を実施した。
 その結果、家島・坊勢地域における生活環境や食生活習慣がむし歯の発生に大きく関係していると推測されたことから、関係機関と連携した歯科保健対策が必要であると考えた。

提案者

母子保健担当者

取組のねらい・目標

 家島・坊勢地域において、歯科保健の課題を明確にし、関係機関が共通認識したうえで、切れ目のない予防対策を実施し、住民が健康意識を高め、むし歯やその他の疾患等を予防し、健康的な生活ができるようにする。

住民が健康に関する知識、技術を身につけ、動機を高める 住民が健康のために行動できる機会や環境を提供する 住民が健康のために、より積極的な行動を継続できるように支援する

数値目標なし

取組内容

(1)関係者連絡会の開催
平成27年度より、地域の歯科医師・幼稚園・小・中学校に声をかけ、連絡会を開始した。
開催状況:毎年度2回実施
検討内容:
(平成27年度)
・家島坊勢地域でむし歯の有病率が高いこと、肥満率が高いこと等を参加機関で課題を共有  
・目指す子どもたちの姿を共通認識  
・幼稚園行事として歯科イベントの開催を検討
(平成28年度)
・各機関のむし歯予防対策を報告  
・「ノーおかしデー」「食べたらみがく」の取組検討、開始
(平成29年度)
・各機関の「ノーおかしデー」「食べたらみがく」取組状況を報告  
・取組評価のアンケート内容を検討  
・子どもや保護者向けに、アンケートを実施、評価
(平成30年度)
・各機関のむし歯予防の取組状況を報告  
・歯科イベントの効果的な活用について検討  
・今後の取組の評価を検討
(令和元年度)
・各機関のむし歯予防の取組状況を報告  
・子どもを対象にした評価アンケートの検討
(令和2・3年度)
新型コロナウイルス感染症により連絡会は開催を見合わせ、各機関と個別的にアンケートの実施や回収、集計について調整
(令和4年度)
書面にて最終評価を報告

(2)関係者連絡会としての取組の実際
●地域の現状・課題の周知
地域の現状・課題を地域住民に知ってもらうことを目的に、平成28年10月に啓発チラシ(第1弾)を全戸配布した。
●「ノーおかしデー」「食べたらみがく」の取組(平成28年11月8日~)
むし歯予防連絡会において地域で一体的に推進するスローガンを決定し、各園・学校等で取り組みを開始した。
[内容] 「ノーおかしデー」:各園・学校で月1日、間食を食べない日(毎月8日)を設定。「食べたらみがく」:各機関で「食べたらみがく」を啓発・推進する。
●取組の評価アンケートの実施
平成29年度に「ノーおかしデー」「食べたらみがく」の進捗状況を確認するため、各園・学校の子ども・保護者を対象にアンケートを実施し、その結果を踏まえて平成30年度に啓発チラシ(第2弾)を全戸配布した。
令和2年度には、プロジェクトの最終評価として再度アンケートを実施した。

(3)各関係機関としての取組
・園たより、学校ほけんたよりへの掲載
・保護者への声かけや、歯みがきカレンダーの作成、幼稚園におけるおやつの種類の変更等
・幼稚園、学校における給食後の歯みがきの徹底
・学校保健委員会や学校評議員会における保護者や地域関係者に対する問題提起
・歯科保健イベントの開催、2歳児歯科健診事業の対象拡大  等
【備考】
・公的な補助金等の支給なし
・過去の応募及びアワード受賞歴なし

実施時期

2014/4/1 ~ 2022/3/31

通算期間

上記期間内での実施状況

①関係者連絡会 12回(平成27年~令和元年)1回あたり概ね10人 ②取組評価アンケート回答数 第1回(平成29年)659人、第2回(令和2年)301人 ③チラシ配布枚数 約2,170世帯

取組内容(補足選択)

既存事業の工夫 ネットワークの推進 調査・研究

協力機関

保健センター・保健所 保育園 幼稚園 学校 教育委員会 診療所

住民参画状況

その他

従事者内訳

保健師 歯科医師 歯科衛生士 保育士 教員 養護教諭

補助金・助成金

なし

取組の評価

 本プロジェクトを通し、家島・坊勢地域のむし歯有病率の高さを、データの分析や聞き取り調査により健康課題として明確化することができた。また幼稚園・小・中学校、保健所・保健センターという子どもに関わる関係機関を巻き込んだ連絡会を実施することにより、各機関で感じていた課題を共有し、関係者のモチベーションが高まるとともに、課題の解決に向けて「ノーおかしデー」と「食べたら歯をみがく」の2つの新たな取り組みを地域で一体的にすすめることができた。連絡会を継続することでお互いの取り組み状況を確認し、困り事や改善点を共有できたことが、各機関が工夫してさまざまな機会を捉えた取り組みの啓発につながったと考えられる。さらに、啓発用チラシを地域住民に全戸配布するタイミングで幼稚園・小・中学校から保護者に協力を促す文書を発送したり、配布したチラシを用いて授業でむし歯予防の個人目標を設定したりする等、効果的な媒体の活用が可能となった。
 取り組みの評価としてアンケートを実施することで、前後の比較をすることができた。また、全戸配布チラシにはアンケート等のデータ分析結果を含めることで、視覚的に分かりやすい問題提起につながった。
歯科健診結果では、家島・坊勢地域のむし歯有病率はこの数年で大きく減少している。本連絡会を通じて子どもだけでなく保護者および地域全体でむし歯を課題として認識し、継続的な働きかけを実施できたことが成果に繋がっていると考えられる。
【参考データ】
(1)歯科健診結果(幼児歯科健診・学校歯科健診)
・3歳児健診むし歯有病率(取組前(H24)57.5%→取組後(R2)30.0%)
・家島・坊勢地域の小学校・中学校について、「取組前(平成24年から平成26年)」と「取組後(平成30年~令和2年)」のむし歯の有無について、カイ二乗検定を行った結果、小学校ではむし歯のない者の割合が「取組前」21.8%、「取組後」39.1%、中学校では「取組前」19.1%、「取組後」39.4%であり、小・中学校ともに、取組後は極めて有意にむし歯のない者が多かった。(p‹0.001)
(2)「ノーおかしデー」「食べたらみがく」取組の評価アンケート結果
(小・中学生)
・平成29年度と令和2年度を比較すると、「ノーおかしデー」については、「ほとんど守れた」「半分ぐらい守れた」の合計が65.0%から50.8%に減少していた。
・「食べたら歯をみがく」については、「ほとんど守れた」「半分ぐらい守れた」が78.5%から82.0%に増加し、改善の傾向がみられた。
(幼稚園)
・「ノーおかしデー」は、「ほとんど守れた」「半分ぐらい守れた」の合計が43.9%に対し、「食べたら歯をみがく」は77.2%と高かった。

目標を達成した

今後の課題

 取組の評価アンケート結果では、歯みがきの習慣は徐々に定着した一方で、間食の頻度や内容については望ましい習慣への改善は難しい現状が伺えた。不適切な食生活習慣は学校健診の肥満度が高いことの要因の一つであると考えられ、将来の生活習慣病等疾病リスクが高まることも懸念される。
 家島・坊勢地域では地域的な特性がむし歯や肥満に大きく影響していることから、今後も子どもだけでなく子ども達に関わる保護者、地域の住民に対して、歯科保健の視点だけではなく、適切な食生活習慣等を含めた住民のヘルスリテラシーの向上に向けて、関係機関と連携しながら継続的な働きかけを続け、子ども達が大人になった次の世代を見据えて長期的な対策を取り組んでいく必要がある。

取組についてのWEBサイトURL

最終更新日:2022-08-18 16:21:13