取組情報

「ストップ!弱視見逃し」3歳児健康診査における弱視の早期発見と子どもの視機能を守る取組み~誰一人取り残さない包摂性の高い社会を実現するために~

取組課題

切れ目ない妊産婦・乳幼児への保健対策 ▼

【妊娠期~乳幼児期】切れ目ない支援 ▼

・児の健康づくりについて

[その他]:3歳児健康診査における眼科検査の導入

子どもの健やかな成長を見守り育む地域づくり ▼

母子保健関係者専門性向上のための取り組み ▼

母子保健分野に携わる関係者の専門性の向上に取り組んでいる地方公共団体の割合

育てにくさを感じる親に寄り添う支援 ▼

育てにくさを感じる親への支援 ▼

障害児支援を主要な課題とする協議体を設置している市区町村数

健康日本21(第2次)に含まれる母子保健に関するテーマ ▼

健康を支え、護るための社会環境の整備 ▼

地域のつながりの強化(居住地域でお互いに助け合っていると思う国民の割合の増加)

取組の対象

幼児 父親 母親 家族 関係者・関係機関

取組の背景

 群馬県内の3歳児健康診査における眼科検査は、従来、大半の市町村で視力検査と問診(アンケート)により実施されてきた。平成28年度の県内の3歳児健診結果のデータによると、健診受診者のうち「視覚」で最終的に要医療と判定された児は全体の約0.1%であった。弱視の子どもの割合が全体の1~2%と言われていることを踏まえると、従来の健診方法では、弱視の子どもがスクリーニングをすり抜けてしまっていたことが示唆される。
 3歳児健康診査での弱視の検出率を上げるには、従来の視力検査と問診に加えて、屈折検査を導入することが有用であり、日本眼科医会、日本小児眼科学会からも導入が推奨されている。しかし、予算や人員、サポート体制の問題などから、導入を見合わせている自治体も多い。
 弱視は早期発見し、視機能が発達する時期に治療を適切に行うことで多くが良好な視力を得ることができるが、早期発見できずに治療の時期を逃すと、一生弱視のまま生活することになる恐れがある。良好な視力は、子どもの身体的な成長や学習にとって極めて重要であり、子どもの将来に影響する。弱視の子どもへ適切な時期に治療を受けられる機会を提供するためには、健診事業に携わる自治体や団体が協力して、3歳児健診の時期に誰一人取り残すことなく発見し、治療につなげる必要がある。

提案者

母子保健担当者 その他

取組のねらい・目標

・3歳児健康診査の眼科検査において、弱視の見逃しをなくすための体制を整備する。
・県内のすべての市町村において、3歳児健康診査に屈折検査を導入する。
・地域格差をなくし、すべての子どもが平等に障害克服のチャンスを得られる社会を実現する。
・健診担当者が子どもの視覚発達や弱視に関する知識、検査技術を習得する機会をつくる。
・保護者が、子どもの弱視についての知識を得て、早期発見、治療に対し積極的行動できるようにする。

住民が健康に関する知識、技術を身につけ、動機を高める 住民が健康のために行動できる機会や環境を提供する 住民が健康のために、より積極的な行動を継続できるように支援する

数値目標あり

取組内容

 平成28年度に群馬県眼科医会から県へ、3歳児健診の眼科検査での屈折検査の必要性、弱視啓発の必要性を訴える要望書が提出された。これをきっかけに、県では、群馬県医師会を始めとする関係団体の医師(小児科、眼科)と視能訓練士及び代表市町村の保健師で構成する検討会議(手引きの作成・見直し、精度管理等)を発足させた。県単位での、行政、眼科医、小児科医、視能訓練士の代表から構成される3歳児健康診査における眼科検査に関する検討会議の設置は国内で初めての取り組みである。
 検討会議では、より精度の高い眼科検査の方法や保護者への弱視啓発の方法について議論し、手引き「3歳児健康診査における眼科検査の手引き~弱視の早期発見のために~」を作成するとともに、県外の団体とも事業コラボを行い、弱視啓発ツールや視力測定の精度向上のためのツールを開発した。そして、手引きに準じた屈折検査の導入を推進し、関係団体が協力して3歳児眼科健診の精度向上にむけて取り組んできた。
 また、市町村保健師が子どもの弱視や視機能の発達についての知識や屈折検査の技術を習得できるように、眼科研修会を平成29年度から毎年開催(令和元年度までに3回開催)。全市町村を対象に継続的に研修を開催している県は他にはなく、保健師からも、担当が変わっても知識を得ることができ、他の市町村の状況を知り、疑問点は気軽に相談できるので、とても役に立つと評価を得ている。
 さらに、検討会議では健診結果データを収集するだけではなく、弱視検出率を市町村別に毎年分析している。分析結果を市町村や、郡市医師会にフィードバックすることで、各自治体での精度向上のインセンティブとなっている。

実施時期

2017/3 ~ 未定

通算期間

上記期間内での実施状況

・令和元年度までに検討会議を5回開催 ・ナッジを活用した弱視の啓発、家庭での検査の精度向上のためのワーキングを開催 ・年1回全35市町村の健診担当保健師70名程度を対象に眼科研修会を開催

取組内容(補足選択)

既存事業の工夫 相談機能の強化 個別支援や集団支援のツール開発 ネットワークの推進 マニュアル・ガイドラインの作成 人材育成の強化(研修等) 調査・研究

協力機関

保健センター・保健所 その他

住民参画状況

なし

従事者内訳

保健師 医師 その他

補助金・助成金

その他

取組の評価

 平成28年度以前、3歳児健診で屈折検査を導入していたのは4市町村であったが、手引きの配布や市町村保健師向けの研修会を開催し、屈折検査の導入を推進したところ、屈折検査導入市町村数は年々増加し、令和2年4月までに県内全35市町村で屈折検査を導入するに至った。
 従来、3歳児健診における眼科検査の要治療検出率は対象児全体の0.1%程度であったが、H29年度以降、屈折検査を導入した市町村の健診結果データでは要治療(医療)検出率が1.8%程度へと改善している。弱視の子どもの割合が全体の1~2%と言われていることを踏まえると、3歳児健診での屈折検査導入が弱視の早期発見につながっていると考えられる。
 また、要精密検査となった児の眼科精密検査受診率が、全国平均(H28年度日本眼科医会調査)と比べても高く、健診担当者の知識向上による保健指導の精度向上、弱視啓発ツールや視力測定精度向上ツールなどの活用による保護者に対する啓発の効果が出ていると考えられる。
 本取組は、H28年度に群馬県眼科医会から県へ要望があったことから始まり、群馬県医師会や郡市医師会、群馬県眼科医会、群馬県視能訓練士会等の関係団体及び市町村の御協力を得られたからこそ実現できた事業である。現在、ほとんどの母子保健サービスの実施主体は市町村であるが、全県的な母子保健に関する課題を解決し、地域間における格差是正のためには県レベルでの取組が必要であり、体制整備にあたっては行政のみで取り組むのではなく関係団体との連携・協働が重要である。
 今後も引き続き、関係団体や市町村に御協力いただきながら、健診結果データを蓄積し、精度管理や手引きの見直し等を目的とした検討会議を開催するなど、本取組を継続していく。

今後も継続する

今後の課題

・精密検査対象児の眼科未受診者を減らすための取組を検討する
・家庭での視力検査の検査可能率を上げるための方法を検討する

取組についてのWEBサイトURL

https://www.pref.gunma.jp/03/bm01_00032.html

最終更新日:2024-05-20 11:09:11