取組情報

「冒険遊び場たごっこパーク」「子どものたまり場おもしろ荘」「みんなの家むすびめ」など

取組課題

切れ目ない妊産婦・乳幼児への保健対策 ▼

[その他]:小学生のときから出会い、妊産婦になっても、乳幼児の母となってもつながり続ける

学童期・思春期から成人期に向けた保健対策 ▼

[その他]:学童期に抱えている生きづらさに、思春期・成人期になっても寄り添い続け、生きづらさの軽減に寄与する

子どもの健やかな成長を見守り育む地域づくり ▼

[その他]:ひとり親家庭、生活困窮家庭の支援に地域の企業、店舗、寺、個人有志などを巻き込む

育てにくさを感じる親に寄り添う支援 ▼

[その他]:発達障害や虐待、不登校などについての学びの場の提供と母子で楽しく過ごせる遊び場の提供

妊娠期からの児童虐待防止対策 ▼

[その他]:学童期に出会い、乳幼児の母となっても繋がり続け、虐待に陥らないように励まし、労い、共に試行錯誤する

実施時期

2004/12/26 ~ 未定

通算期間

上記期間内での実施状況

「冒険遊び場」1,000回超・延べ20,000人超 「子どものたまり場」2,000回超・延べ20,000人超 「みんなの家」50回・500人超 ほか開催無数、人数計り知れず

取組の連携先

地方公共団体 民間団体 他の企業

取組の対象

幼児 学童 思春期 母親 家族

取組の概要

子どもたちが自由に遊べる環境を
 手始めに取り組んだのは、子どもたちが自由に遊べる環境づくりでした。行政の取り組みの中で、足りないものの一つが、子どもの遊び場づくりだからです。行政による子ども支援は、教育と福祉が中心です。でも、子どもが育つために何よりも大切なものは、「外遊び」ではないかと感じていました。
 今や公園には、火遊び禁止、ボール遊び禁止、自転車乗り入れ禁止といった看板が並びます。僕らが子ども時代に生き生きと遊んだ川も森も、子どもだけで遊ぶことができなくなりました。子どものひそかな遊び場だった空き地や資材置き場は、責任問題の高まりから立ち入り禁止の場所になりました。
 遊びを奪われた子どもたちは、社会的に豊かに育っていけるのか。遊びを子どもに返そう――。そんな思いで04年12月、「冒険遊び場たごっこパーク」という場の提供を始めました。愛称の由来である「田子の浦(たごのうら)港」に近い公園と川で隔週末に開催しています。川遊びをし、木登りをし、泥遊びをし、たき火を楽しむ。ここには、そんな子どもたちの姿があります。
 大縄跳びをして遊んでいた小学生たち。そこに高校生が加わると、回し手が勢いよく縄を回しました。高校生のお兄さんの運動神経の良さに合わせたのです。自閉症の診断を受けている幼児が興味深げに近付いてきたときには、縄をだらんと垂らしました。その子は、一度だけその縄をまたぐと満足そうな様子で、またいつもの一人遊びを始めました。このような臨機応変な遊びの展開の中でこそ培われる社会性は、学校教育では決して得られないものです。

子育ち応援の試みの挫折
 「たごっこパーク」と並行して、05年4月から08年10月まで、「放課後ガキンチョ団」という学童保育型の会員制会費制の活動をしていました。きっかけは、近隣の学童保育(児童クラブ)の子ども本位ではない活動実態を知ったことでした。そこでは子どもたちが指導員から「あれはするな」「これはダメだ」「それをしなさい」と“指導”されてばかり。子育て支援とは名ばかりで、安心・安全な預かりだけが目的となり、単に親のための就業支援施設にしかなっていないと感じました。子育て支援は何よりも子どものためにあるべきではないのか。子育て支援ではなく、子育ちを応援する活動をしようと思ったのです。
 「ガキンチョ団」では、子どもたちがハチャメチャな遊びの時間を満喫していました。川でザリガニを捕り、田んぼでおたまじゃくしをすくい、浜で焼き芋をしました。そんな子どもたちを眺めている時間は最高に楽しいものでした。しかし、仕事を終え迎えに来る親は、その日の子どもたちの遊びに関心がないのです。「早く帰るよ」とあいさつもそこそこに引き揚げてしまいます。親が迎えに来る時間はつらいものでした。
 ある日、小2のルナが「私、一日の中でお母さんが迎えに来る時間が一番嫌い」と悲しそうな顔でつぶやきました。その前日、みんなで早春の川へ遊びに行き、つくしをたくさん採ってきました。僕の妻の手ほどきのもと、みんなでつくしのつくだ煮を作り、食べました。ルナは「お母さんにも食べさせてあげる」と袋につくだ煮を入れ、持ち帰りました。でも、ルナが母につくだ煮ができるまでの「物語」を話し出すと、途中で遮られ、「何、この汚いのは」とゴミ箱に捨てられたのだそうです。
 子どもが既存の学童保育では味わえない、とびっきりの放課後を過ごせば、親の意識も変わるだろうというのは幻想に過ぎなかったのか。「子育て」を支援するのではなく、「子育ち」を応援しようという試みのはずだったけれど、僕らはいったい誰の何を支援しているのだろう。そんな揺らぎを覚える日々が続き、「ガキンチョ団」を閉じることにしました。

遊び場づくりから居場所づくりへ
 「ガキンチョ団」を閉じた後、いくつかの実験的な試みを経て、11年3月に「子どものたまり場おもしろ荘」を開きました。旧東海道沿いにある空き店舗をリフォームして、放課後の子どもたちが自由に過ごせる居場所を提供したのです。ここでは、答えを丸写しして宿題を片付ける小学生、駄菓子を食べながらマンガを読む中学生、スマートフォンを片手におしゃべりをする高校生――。子どもたちが思い思いに過ごしています。
 「たごっこパーク」と「おもしろ荘」には、共通の特徴があります。「子どもの生活圏での開催」「参加費無料」「親の申し込み不要」「参加年齢に制限なし」で、障がいの有無や登校・不登校も問いません。また、流しそうめん大会やけん玉選手権といったプログラムもなく、タイムスケジュールもなし。いつ来て、いつ帰ってもよく、遊ぶのも自由、遊ばないのも自由です。こうした場の提供が、家庭や学校に居場所を見いだせない子どもとの出会いにつながりました。
 人里離れた有料野外教育施設での活動は、親が送迎したり、主催団体に申し込んだりしないと参加できません。子どもの足で来られる場所に開き、参加費無料にしたことで、生活困窮家庭の子どもや不適切な養育家庭の子どもも遊びに来ています。
 決められたプログラムがないので、学校や公共施設が好んで求めがちな一律、一斉にみんなで活動することが美しいとされる場面が苦手な子どもにも、居心地のいい場所になりました。あるいは「30分でこんな形に仕上げましょう」という大人の求める進度で課題に取り組むことが困難な子どもも常連になりました。遊び方は自由なので、独創的な遊びを一人黙々とするのが好きな子どもや、大人の許容範囲を超えてハチャメチャに遊ぶ子どもが集う場にもなりました。

支援ではなく、共に生きる
 「特別な支援」や「社会的養育」が必要だといわれる子どもたちとの出会い――。これは、活動を始めたころには、強く意識していないことでした。でも、自由な外遊びの場や居心地のいい放課後の遊び場が子どもたちの居場所になり得たことで、生きづらさを抱えた子どもたちに次々と出会うことになりました。僕らはそこに自分たちの使命があると感じ、そうした子どもたちと日々を重ねることに市民活動の意義を見いだしていきました。
 活動の中で、不登校児支援、障がい児支援、貧困家庭支援といった看板は掲げていません。そこに特化するほどの専門性を持ち合わせていないことが大きな理由です。でも同時に、「支援」という言葉に「支援する側・される側」という一方通行な関係性を生むような揺らぎを覚えるからでもあります。そんな「○○支援」の看板を掲げていないからこそ、「支援機関」のネットワークという網目からこぼれ落ちる子どもたちと出会えたのかもしれません。

取組についてのWEBサイトURL

http://yumemachinet.web.fc2.com/

コラボ事業者募集中

コラボ実績あり

最終更新日:2022-08-16 10:02:43